変革期にある印刷業界TRANSITION


印刷業界は、デジタル技術の急激な進化に伴い、大きな変革の時期を迎えています。
過去から現在に至る人類の歴史において、「人々のコミュニケーションメディア」として大きな役割を果たしてきた印刷技術。その歴史を振り返っていくと、今後の印刷業界の未来像が見えてきます。印刷業界の変革の先に何があるのか、一緒に見ていきましょう。

1 文化を生み出し、ささえてきた印刷技術

私たちの身の回りにはさまざまな印刷物があります。本や雑誌、新聞などの読み物はもちろん、駅に貼られたポスター、食品のパッケージ、道路標識などもすべて印刷物です。さらには、交通系ICカードや液晶ディスプレイなどにも印刷の技術が用いられているのです。まずは、その「印刷」の技術がどのように誕生し、変化を遂げ、文化に影響を与えてきたかを見ていきましょう。

印刷の誕生

「印刷」の誕生は7世紀ごろと言われています。印刷は、手で書き写すよりも早く正確に同じ情報を複製することを可能にしました。現存する世界最古の印刷物は、日本で8世紀につくられ仏教寺院に奉納された「百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)」です。何世紀ものときを経ても残り続ける、保存性に優れた媒体です。

活版印刷による
情報化社会の幕開け

15世紀に入り、グーテンベルクが「活版印刷」を発明し、印刷技術を大きく前進させました。活版印刷は、羅針盤、火薬とともにルネサンスの三大発明のひとつで、人類の文明に大きな発展をもたらしました。効率的に大量印刷が可能になったことで、聖書の普及にもつながりました。書籍は、それ以前は貴族や富裕層しか入手できない非常に高価なものでしたが、一般市民でも手に入るようになり、識字率の向上にも寄与しました。活版印刷の発明は、知識を広く普及し、情報伝達のあり方を大きく変化させたのです。

産業革命と印刷

印刷の技術は19世紀に入ると一層高度化しました。現在でも主流となっている印刷機の原型などが開発され、より低コストでスピーディーに大量印刷ができるようになりました。これにより、マスメディアとして新聞が台頭していくことになります。また、印刷は、急速に進歩する科学技術の情報を全世界に即座に広めたことで、さらに産業革命が進行し、社会構造を大きく変貌させるきっかけを担ったのです。

2 デジタル化社会の到来と印刷ビジネス

デジタル化社会とインターネットの普及は、印刷業界にとってこれから到来する大変革時代を象徴するものとなります。それまで情報を伝える手段として主流だった印刷物の立ち位置が、デジタル化によって大きく変わることになったのです。

印刷業界のデジタル化

1970年代に入り、印刷業界でもコンピュータが利用されるようになりました。
1990年代には、DTP(Desktop Publishing)が普及し、印刷物の紙面を作成する工程がデジタル化され、従来は数多くの人の手により多岐に渡る工程を経て行われていた作業が1人でもできるようになりました。これにより、生産性が向上しました。また、アナログの資料をデジタル処理する技術力も、同時に獲得することになったのです。

インターネットの普及

1995年、Windows 95の登場で幕を開けるインターネット時代の到来も、印刷業界に大きな影響を与えました。2000年代以降、携帯電話やスマートフォンを利用してインターネットにアクセスする行為は一般的なものとなりました。利用者の増加とともにインターネットのコンテンツも増加の一途を辿り、メディアとしての影響度も高まってきました。 1990年代は、外出先でニュースを見ようと思ったらコンビニや駅の売店で新聞を購入して読む時代でした。今はスマートフォンのアプリで、自分が興味のあるニュースを自由に見ることができます。新聞だけでなく、マンガも今は電子書籍で見ることができますね。また、広告や販促の手法についても、一昔前はほとんどが折込チラシやDMでしたが、今ではSNSを活用した販促も行われるようになりました。このように従来は紙で発行していた情報も、インターネットでの掲載に置き換わるなどの影響から、印刷産業に求められる役割も変化してきています。

3 幅広い取り組みを始めた印刷業界

デジタル化により、印刷業界は変革が求められる時代に突入しました。しかし、全ての印刷物がデジタルに移行するわけではなく、継続して求められる「印刷物」もまだまだ数多くあります。また、企業各社は、これまでの枠にとどまらない新しい取り組みを行い、その存在価値の維持・向上に努めているのです。

印刷技術の応用の取り組み

印刷会社の事業領域は非常に広範囲です。紙への印刷に限らず、それにより培った技術やノウハウを活かし、ICカードや、フィルムなどのパッケージ、プラスチックの成型、壁紙などの印刷も行っています。また、印刷技術を応用した液晶カラーフィルターや電子精密部品の製造など、エレクトロニクス分野への事業展開も行われています。

紙の印刷においても
変革が進展

もちろん、紙の印刷の事業自体についても、印刷会社は変革を進めています。従来は、少品種大量生産をメインとしていた印刷業務は、個人の嗜好の多様化を受けて、小ロット化や一人ひとりに向けた異なる紙面の印刷物の製造が求められる時代となっています。また、コスト削減や環境配慮の視点から在庫を持たずその都度製造するケースも増えてきました。各社は、それらに対応できるよう体制を整えています。

ものづくりを超え
課題解決のパートナーへ

もともと製造業の括りにあった印刷業界ですが、いまや製造業の枠組みを大きく超えたビジネスを展開するようになっています。多くの印刷会社は顧客の課題解決のため、印刷の前後工程についてもサービスを提供するようになりました。また、マーケティングやプランニング、デザイン制作などから、物流業務やデータベースの構築、効果測定までも行うなど、「サービス業」として顧客の企業活動を広範囲に支える役割を果たし始めています。

4 さらなる変化へ~コミュニケーションを支える印刷業界

コミュニケーションのあり方がかわってきた現在、印刷業界は自社の核となる印刷機能は残しながらも大きくその姿を変え、コミュニケーションにおける課題を解決する役割を担い始めています。最後の章では今後、印刷業界がどのように生まれ変わりつつあるのかを見ていきましょう。

情報コミュニケーションへの
取り組み

印刷の歴史で見てきたように、印刷はメディアとしての役割を果たし、印刷業界はその担い手として情報伝達やコミュニケーションの在り方を考え抜いてきました。これからの印刷業界は、社会や文化をかたちづくる「情報コミュニケーション産業」として捉え直され、コミュニケーションをあらゆる側面から支援するプロフェッショナルへと変革していくと考えています。人間が営みを続ける限り、コミュニケーションはおのずと発生します。その意味で、印刷業界にとっての顧客は企業にとどまらず、一般消費者まで含めて対象となっていくことでしょう。

クロスメディアで最適な
コミュニケーションを実現

ここまで見てきたように、印刷業界は顧客の課題解決を提供する存在へ変わりつつあります。その課題解決におけるソリューションは、紙がメディアの主流であった過去からは比較できないほど、バリエーションは豊富になりました。

例:コミュニケーションの手段

訴求型(伝える側から受け手に対して一方向のコミュニケーション)
<アナログ>ポスター、カタログ、パンフレット、DM、店頭POP、ノベルティなど
<デジタル>WEBサイト、WEB広告、動画、デジタルサイネージなど

双方向型(伝える側と受け手による双方向のコミュニケーション)
<アナログ>展示会、コンベンション、パーティーなど
<デジタル>SNS(Twitter、Facebook、Instagramなど)、WEBアプリなど

体験型(経験、体験を通じたコミュニケーション)
<アナログ>セミナー、ワークショップ、ショーイベントなど
<デジタル>VR、ARなど

このように数あるコミュニケーション手段をどのように組み合わせ、それらの手段で何をどのように伝えるのか。さらに、システムやアーカイブの構築など、印刷業界の過去のデジタル化への対応によって獲得してきた技術力も、コミュニケーションの効率化に寄与するソリューションとなります。
印刷業界は、課題解決のビジョンを示すだけにとどまらず、メディア制作やイベント運営などカタチにすることまでこだわります。顧客の課題に対し、多岐に渡るソリューションを組み合わせ、効果的かつ効率的に実施までを行う企業体へ。従来、広告代理店が寡占していた領域にも進出を果たし、顧客からも受け入れられはじめているのです。


「印刷」を超越していく
業界の未来

今後のテクノロジーとして注目を集める、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、ビッグデータの活用なども、印刷業界ではすでに取り組みをはじめています。また、文化交流や街づくり、健康づくりなど、コミュニケーションをテーマとした新たなビジネスへの展開も広がっていくことでしょう。
今後も印刷業界は、コミュニケーションの課題解決に一層の重点を置き、これまで以上に取り組みを加速させていくことは間違いありません。その先に大きな可能性がある限り、その挑戦はとどまることはないでしょう。激しい変化の時代において、印刷業界は新たなステージへ飛び立とうとしています。

私たち図書印刷も中長期的に「情報に付加価値を提供してデザインする企業へと進化・発展する」という経営方針を掲げ、新たな挑戦に日々取り組んでいます。ぜひ、新たな可能性が目の前に大きく広がる印刷業界で挑戦をしてみませんか。

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