ブランドエクスペリエンスとは?重要視される背景、効果、事例も紹介

ブランドエクスペリエンスとは?重要視される背景、効果、事例も紹介

マーケティング・販促

ブランドが成立するには、多くの顧客がその商品やサービスの独自の価値や魅力を認識する必要があります。顧客にそうしたブランドの価値を感じさせるものこそが、ブランドエクスペリエンスです。この記事では、ブランドエクスペリエンスとは何か、近年、ブランドエクスペリエンスが重視されるようになった背景や効果を解説し、事例を紹介します。

ブランディング3つのステップ

ブランドエクスペリエンスとは?

ブランドエクスペリエンス(Brand Experience)は、「ブランド体験」とも呼ばれ、ブランドとのあらゆる接点において、顧客がブランドについて認識し、何らかの印象を持つような体験を指します。

ここでいうブランドとは、「他社とは異なる独自の価値」が多くの人に共感され、共有されることによって成立する、人々に共通して持たれるポジティブなイメージです。

ですから、ブランドエクスペリエンスは、その「ブランドならではの価値」を顧客にイメージさせるさまざまなプロセスであると考えられます。さらに、そのプロセスで生じる顧客の認識や感情、思考、行動そのものを表す場合もあります。

ブランドエクスペリエンス戦略とは?

ブランドエクスペリエンス戦略とは、それぞれの接点において「どんなブランド価値」を「どう伝えるか」という方針やプランです。

ブランドエクスペリエンス戦略では、あらゆる接点で同じひとつのブランド価値を伝えることが重要です。顧客のブランドイメージはブランドエクスペリエンスの積み重ねによって明確になっていくため、提供するブランド価値がぶれているとイメージも揺らいでしまうのです。

ですから、商品、サービス自体や広告、プロモーション、店舗、Webサイト、顧客対応などは、すべて同じブランドコンセプトに基づいて設計することが求められます。

また、個々のブランドエクスペリエンスは、その体験を通して「顧客がブランドに対してどんな感情を持つのか」を想定し、顧客を主体として設計する必要があります。

ブランドエクスペリエンスのシーン

顧客が当該ブランドと出合うあらゆる接点が、ブランドエクスペリエンスのシーンとなります。

例えば、顧客が何らかのニーズを感じてから、Webサイトで情報を調べたり、広告を見たりして商品を認知し、店頭で商品に触れ、試用して購入し、利用するまでの一連の体験は、その一つひとつがすべてブランドエクスペリエンスと言えるでしょう。

さらに、購入後の問い合わせへの対応やアフターサービス、フォローまでの体験もブランドエクスペリエンスに含まれます。

いくつか具体的な例を挙げてみましょう。

  • 検索して見に行ったWebサイトで、必要な情報がスムーズに得られた
  • Webサイトで開発の裏話を伝える動画を見て、商品への信頼感が増した
  • 商品を試用して、機能を実感した
  • 店舗で販売員から丁寧な接客を受けた
  • ECで購入した商品が、きれいに梱包され、メッセージが添えられて届いた
  • SNSの商品アカウントにコメントを付けたら、すぐに丁寧な返事が来た

また、昨今話題となっている、メタバースのブランドスペースで仮想的体験をするといったことも、新しいブランドエクスペリエンスと言えるでしょう。

ブランドエクスペリエンスが重要視される背景

次に、ブランドエクスペリエンスが重要視されるようになった背景を説明します。

モノ消費からコト消費へ

現代の消費スタイルは、単に商品を購入する「モノ消費」から、購入のプロセスや商品をどう使ったか、どんな体験をしたかを重視する「コト消費」に移行したと言われています。

今では、多くの企業が消費者を「商品やサービスを買う」人から、「商品やサービスを利用する人」としてとらえています。つまり、企業は単に「商品、サービスを売っている」のではなく、「商品、サービスにまつわるすべての体験を売っている」と考えるようになったのです。当然、ブランディングや競合との差別化においても、消費者の個々の体験を意識しなくてはなりません。

こうしたことから、体験を通して統一されたブランド価値を顧客に伝えるブランドエクスペリエンスが、ブランディング成功の鍵になるとして重視されているのです。

消費プロセスの変化

インターネット上の口コミ情報が消費者の行動プロセスに与える影響の大きさも、ブランドエクスペリエンスが重視されるようになった背景のひとつと言えるでしょう。

現代の多くの顧客は、企業が発信する商品やサービスの情報に加え、実際にそれらを利用したユーザーの声をSNSやレビューで見て、購入や利用を決断します。

一方でインターネット上には、商品やサービスそのものの評価だけでなく、商品の使い勝手や利用シーン、店の様子や接客、商品発送のスピード、梱包の状況など、商品、サービスに関連するさまざまなコメントが投稿されています。なかには、ブランドコンセプトと相反する体験をしたユーザーの厳しい評価が拡散されるケースもあります。

こうしたあらゆる口コミが、購入や利用の判断に影響を与える可能性があります。今や企業は、顧客とのすべての接点において、顧客を満足させる体験を提供しなくてはならなくなったのです。

ブランドエクスペリエンス戦略の効果

ここでは、ブランドエクスペリエンス戦略を行うことで期待される効果を解説します。

ブランド価値を伝える

これまで見てきたように、顧客との接点ごとに質の高い体験を提供することが、ブランドコンセプトやブランドメッセージを顧客に的確に伝えることにつながります。

店頭やWebサイト、SNS、広告、営業ツール、カスタマーセンターなどそれぞれのシーンで、すべてのスタッフがブランドエクスペリエンスを意識して顧客に接することによって、ブランディングは強力に推進されます。

ブランドロイヤルティを高める

優れたブランドエクスペリエンスが積み重なると、顧客は商品やサービス、企業に対して共感や信頼感を抱くようになり、ブランドロイヤルティ(ブランドへの愛着)が高まります。

こうしたブランドロイヤルティの高まりはファンや優良顧客を増加させ、LTV(Life Time Value=1人の顧客が取引を始めてから終わるまでの期間にもたらす利益の総額)を向上させます。その結果、経営は安定化していくのです。

ブランドエクスペリエンスの事例

最後に、ブランドの個性をリアルに体感できるブランドエクスペリエンスの事例を紹介します。

商品、EC、店舗、ホテル……すべてが“MUJI”のコンセプトで作られる[無印良品]

株式会社良品計画が展開する「無印良品(MUJI)」は、シンプルで品質の良い生活雑貨や食品を製造販売するブランドです。1980年の誕生以来、ものの生産プロセスを徹底して合理化し、“簡潔で気持ちのいい低価格商品”を生み出し、多くのファンから支持されています。

無印良品には幅広いカテゴリーの商品があり、そのすべてに共通のイメージを持たせることに成功しています。また、店舗の内装やポスター、値札、レジ回り、ECサイトなどあらゆる場面からも、“MUJIらしさ”が感じられます。それはすべての商品やサービスを、徹底して練り上げた同じひとつのコンセプトに沿って開発しているから。

2019年には、さらにリアルにコンセプトを体感できる施設「無印良品 銀座」がオープンしました。ほぼフルラインナップの商品がそろうショップのほか、ギャラリーやベーカリー、レストランやホテルもあり、MUJIワールドのなかで暮らすような体験ができます。

こだわり抜いたメイドインジャパン……LEXASの世界観を多彩に表現[LEXAS MEETS…]

トヨタ自動車の「LEXUS」は、個々の顧客の時間と空間を豊かにし、唯一無二の体験を提供することを目指す高級車ブランドです。2018年に日比谷にオープンした「LEXAS MEETS…」は、こうしたLEXUSの世界観をさまざまな形で体験できる施設です。

例えば、全車種のなかから乗りたいLEXASを選んで、90分間フリードライブできる商談なしの試乗体験では、LEXUSならではのラグジュアリーな機能や乗り心地を体感できます。

また、“本質を追い求め、丁寧にこだわり抜く”というLEXASの姿勢に共鳴する日本発祥ブランドの雑貨が購入できるほか、日本の食材にこだわった美しい料理が食べられるコンセプトカフェも。自動車を購入する予定がない人も、LEXUSならではの世界を体験できる個性的な空間です。

質の高いブランドエクスペリエンスの積み上げが共感や信頼を生む

ブランドエクスペリエンスとは、ブランドとの接点において、顧客がブランドについて認識し、何らかの印象を持つ、すべての体験を指します。商品、サービス自体から、広告やWebサイト、接客、アフターサービスに至るあらゆる場面で、質の高いブランドエクスペリエンスが積み重なることにより、顧客はブランドの価値を実感し、共感や信頼感を抱くのです。それぞれの接点において、顧客に提供できる最高のブランドエクスペリエンスとは何かを考えていきましょう。

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