シリーズコラム/コンテンツ製作の現場から【児童書コンテンツ】後編

シリーズコラム/コンテンツ製作の現場から【児童書コンテンツ】後編

出版

出版市場はいま大きな変革の最中にあります。

相次ぐ書店の閉店など厳しい現状が伝えられる一方で、今までにはなかった価値の提供とスピード感で新たなビジネスモデルが生まれているのもこの市場の特徴です。

激変する市場に対応するために、今日も当社の「コンテンツ製作の現場」は動いています。本コラムは、変化する市場に対する当社の取り組みを知っていただく内容として、シリーズでお届けします。

 

第2回【児童書コンテンツ】後編
本という枠組みにとらわれない
自由な発想と技術でコンテンツを進化させる

児童書にスポットを当てたシリーズコラムの第2回。前編では、主にプリンティングディレクターの視点からみた児童書についてご紹介しました。後編となる今回は、商材開発部に所属する秋山直己氏に話を聞き、紙だからできることや、簡単にはデジタルに移行しない児童書の未来図などを描いていきます。

前編はこちら

特殊な様式になることが多い児童書は製本担当が本づくりをリードする

出版業界に大きな変革をもたらしているデジタル化の波。ですが、児童書においてその変化は、他の分野と比べて非常に穏やかだと言えます。その理由のひとつとして、前回、「紙の本は味覚を除く五感を刺激する」という話をしました。その感覚に訴えるという部分で大きな役割を担うのが製本の部分です。

現在は商材開発を担当している秋山氏ですが、元々は生産技術に所属しており、製本分野に精通している人物。児童書における製本の重要性を聞きました。

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秋山直己
図書印刷株式会社
技術開発本部 商材開発部商材開発グループ

「様式が特殊な本の場合、製本の技術者に相談が来ることが多いです。たとえば、製本コンシェルジュの岩瀬が手掛けた、巨人本(超特大サイズの『巨人用 進撃の巨人』)のような場合です。ここまで特殊ではないにしろ、児童書、特に絵本の場合は、造本設計が重要となります

見て、触って楽しむ児童書は、そもそも製本自体にギミックが多いもの。くり抜いたり、窓をつけたりする場合、台割や面付けを先に決め、本全体の構成を組み立てなければ、具体的な行程に入れません。まして、複雑な構造のものなら尚更です。

「作家や編集から出た要望やアイデアを形にするのも製本担当の仕事。まずは白ダミーでどう作るかを試行錯誤します。本を読む子どもたちがどうしたら驚いてくれるか、喜んでくれるかを考えながら、何度も作り手側とやり取りをします」と秋山氏。しかし、構造的にOKとなってもすぐに製造には移れないと言います。

「手作りで1冊だけ作るのなら、複雑なギミックも手間のかかる工程も可能ですが、本として売り出すには、大量生産ができなければ意味がありません。なので、その構造を生産ラインに乗せられるよう、さらに工夫を重ねていきます」

こうした部分は、紙だからこその苦労とも言えますが、逆に紙にしかできないことでもあり、子どもたちに与えるインパクトは非常に大きいと言えるでしょう。

作り手の想いに寄り添いつつ、
児童書が最も大事にするのは、堅牢であること

 作り手の要望を叶えるために技術や経験を駆使する製本部門。前回のプリンティングディレクター(以下PD)と役割は違えど、作り手の想いに寄り添うというスタイルは同じです。

それに加え、児童書を作るうえではもう一つ大切なことがある、と秋山氏は言います。
絶対的な堅牢性。これは、児童書には欠かせない要素です。子どもたちが繰り返し読んでも壊れないこと。そして、図書館などに納める際も、たくさんの人が何度も読むことを考えれば、丈夫な本であることはとても重要です」
厚紙を張り合わせた合紙絵本などはその一例ですが、この製造ラインを持っている印刷会社は、図書印刷を含めても3社しかないと言います。ちなみに、図書印刷では合紙絵本をさらに発展させ、天地方向や左右方向に紙面が広がる「spreak(スプレック)」を開発。単なる丈夫な本と言うだけでなく、表現力を広げた新しい合紙絵本のアイデアを提案しています。

ラスタシエ&スプレックeBook

丈夫な本を作るための希少な製本技術という点では、従来からある工程と新しい技術の組み合わせを行います。「かがりPUR」もその一つです。
現在、従来の無線綴じ製本に使用する接着剤より強度や耐熱性に優れたPUR糊を使用した、いわゆるPUR製本への置き換えが進んでいます。丈夫で開きやすいと言われていますが、絵本の使い方を考えると、どうしても糊付け部分から壊れてしまうことは避けられません。そこで、
「従来からある、糸でかがる工程を残し、PURと組み合わせて強固な本を作りました。かがりは今後、無くなっていく工程とも言われていましたが、かがりをすることで、折同士が糸でつながり、かつPURで綴じる事で、壊れにくくなります。児童書を手がける限り、伝統的な技術は手放してはいけない。大切にしなくてはいけない」と秋山氏は言います。
多くのものが合理化していく現代においても、児童書を作る現場は、合理化オンリーでは進められない、進めてはいけないのです。

児童書の世界を大きく広げる
商材開発を活用した新たな試み

合理化だけでは測れない児童書の世界。その可能性をさらに広げる試みが、図書印刷では進んでいます。
仕掛け人でもある秋山氏は、「今、図書印刷にはプレミアム商材製造を行う<Sファクトリー>が稼働していますが、そこで生まれた技術を児童書に取り込めないかと考えている」と言います。

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たとえば、光を反射してキラキラと輝くホログラム加工を使って、夜空や宇宙をより鮮やかに華やかに魅せられないか、絵を削ると下から新しい絵が出てくるスクラッチで、より子どもたちを楽しませる仕掛けができないか、等。視覚だけではない、感触や体験を含めた新たな付加価値をつけることで、絵本や児童書はもっと魅力あるものになっていくのではないか、と考えています。

さらに、「本という形態にこだわらない」という提案も。児童書を「子どもを楽しませるもの」と定義するなら、本に固執せず、コンテンツとして捉える柔軟性も必要だと言います。
Sファクトリーの技術を活用した例を一つあげるなら、ポスター大のぬり絵があります。ぬり絵というとひとりでやるもの、というイメージがありますが、大型ポスターが刷れる技術を用いれば、巨大なぬり絵も製作可能。1枚のぬり絵を保育園の子どもたちがみんなで一緒に仕上げることで、新しい楽しみが生まれることが期待できます。
「みんなで一緒にやるぬり絵は、リアルだからできることです。このみんなで一緒にが、子どもたちにはとても良い経験になると思っています」と秋山氏。
児童書は、子どもを楽しませると同時に、子どもたちを育むものでもあります。児童書、児童コンテンツをさらに輝かす技術、開発の試みに、大いに期待が膨らみます。

今後も成長を続けていくために
図書印刷ができること、していくこと

児童書に長く携わってきた図書印刷が、これから何ができるのか、何をしていくのか。営業、PD、製本、それぞれの立場から、改めて語ってもらいました。

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「営業は常に、作り手がやりたいことと、コストや納期の板挟みの中にいます。本を完成させることを優先すると、つい、できることの範囲の中ですべてを考えがちです。時々、お客様からの提案やアイデアで、新たな可能性に気づくことがあります。どうしたらできるのか工夫することで自分たちのできることが広がっていく。これを積み重ねていき、自他ともに認める児童書の製造でナンバー1を目指したい」(鶴巻氏)

「デジタルと紙の本の良さ、たとえば、デジタルならその発色の鮮やかさ、読み聞かせの音声を著名な人物に託すとか。また、紙の本なら手描きの優しい風合いや、形やギミックで楽しませる部分など、それぞれの魅力を理解しながら、児童書に新しい価値を生み出せていけたらと思っています。どう表現するかは、これからさまざま変わっていくかもしれませんが、作り手の想いに寄り添った制作はこれからも変わりません。想いを大切にしながら、本づくりに真摯に取り組んでいきたいですね」(池浦氏)

「図書印刷は本づくりが中心ではありますが、そこにとらわれることなく、お客様である出版社様のコンテンツを活用し、エンドユーザー様に、楽しく新しい体験を届けていきたいと思います。児童書に限りませんが、見てもらわないことには、それに価値は生まれません。そのために何ができるかを考え、よりスムーズに、スピーディにお客様の手元へ届くまでをプロデュースしていければと思います」(秋山氏)

出版業界の中で、着実に売上を伸ばし続けている児童書分野。子どもたちがいる限り、失くなることはありませんが、このまま好調を維持していくために、まだできることはたくさんあると思います。その中で、図書印刷ができること、やるべきこともたくさんあります。

作り手に寄り添うために、子どもたちの未来を育むために、図書印刷の力が児童書コンテンツの助けになれば、と考えています。

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図書印刷はお客様の課題解決を支援します

図書印刷は、印刷技術を核として幅広いサービス・製品を提供し、お客様のコミュニケーションを支援しております。

「コンテンツの世界観に合わせた、魅力的なグッズをつくりたい」
「ユニークな装丁のアイデアが実現できるか相談したい」
「周年に合わせた豪華本をつくって、著者やファンに喜んでもらいたい」

…など、お客様がお持ちの課題に合わせて、サイズや色づかい、さまざまな特殊な用紙、印刷、加工、製本方式などを組み合わせて、お客様のアイデアの具現化を支援いたします。
お客様の色や装丁へのこだわりにできるかぎりお応えするために、当社にはプリンティングディレクターや製本コンシェルジュがおります。まずは、どんなことでもご相談ください。

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