シリーズコラム/コンテンツ製作の現場から【教科書、教材コンテンツ】後編

シリーズコラム/コンテンツ製作の現場から【教科書、教材コンテンツ】後編

出版

出版市場はいま大きな変革の最中にあります。

相次ぐ書店の閉店など厳しい現状が伝えられる一方で、今までにはなかった価値の提供とスピード感で新たなビジネスモデルが生まれているのもこの市場の特徴です。

激変する市場に対応するために、今日も当社の「コンテンツ製作の現場」は動いています。本コラムは、変化する市場に対する当社の取り組みを知っていただく内容として、シリーズでお届けします。

 

第3回【教科書、教材コンテンツ】後編
物流の枠を超えて
デジタル化に柔軟に対応していく

紙からデジタルへ。その変化の中で大きな影響を受ける教科書や教材について現場視点で語るシリーズコラムの後編。前編では主にデジタル教科書の制作面について注目しました。今回は、物流面への影響について、営業企画部門の花出守氏、営業部門の澤田将一氏、生産管理部門の西尾伸一氏に話を聞きました。独自ルールの多い教科書や教材の物流について、図書印刷における強みやデジタル化に伴う展望などにスポットを当てていきます。

前編はこちら

教科書や教材の物流は独特
一筋縄ではいかない

物流とひとことで言っても、業界ごとに細かなルールが異なり、それに合わせた対応が必要です。中でも、

「教科書や教材に関しては独自のルールも多く、複雑な作業になります」と花出氏は言います。

花出氏
花出 守
図書印刷株式会社
情報デザイン統括 営業企画部

教科書は通常の配本ルートと同様に、日教販様やトーハン様などの取次店に配本します。しかし、副教材、たとえばノートやワークブック、ドリルなどについては、全国各地にある特約店に納品する他、教科書取扱書店や学校へ直接、個別配送する場合も。当然、学校によって使用する教材の種類や数量が異なります。生徒用だけでなく、教師用の指導書セットもあり、付属品の有無なども含め、指示書の指定は細かく、さらに言うなら、教科書取扱書店の数は2700箇所以上あり、学校も小中学校合わせると3万校は下りません。この複雑にして膨大な物流をミスなく行うには、慣れた業者でなければ対応が難しいことは言うまでもないでしょう。図書印刷は、歴史的に長く教科書づくりに携わってきたことから、物流に関しても相談を受ける場面があり、教科書供給に関する独特な業務内容、商習慣などを理解している土台ができていました。

教科書供給の仕組み.png

「教科書や教材の供給については、版元が自社で行うことも少なくありません。それが難しい場合は、信頼できるパートナーにアウトソーシングしている例が多いので、パートナーが固定化される傾向があります」

ところが、最近は市場の縮小やDX化の潮流の中で、固定化されていた物流体制にメスを入れる場合も増えているようです。当社は、この転機をチャンスと捉え、物流面でのアプローチでも成功事例がでてきました。実際の事例についてご紹介していきましょう。

大切なのは実績と信頼
それを勝ち得るために行ったこと

「最初は見積の依頼という形でお話をいただきました」と澤田氏。

長く3PL※を任せていた会社に不満と不安を抱き、乗り換えを検討していたA社様。当社とは製作業務が中心のお付き合いでしたが、教科書の物流に関しても経験があることをご担当者がご存知だったことから、副教材の3PL業務の打診をされたようでした。

※3PL: Third Party Logisticsの略。一般的に荷主企業に代わって第三者(サードパーティー)が効率的な物流システム構築の提案を行い、物流業務の企画・設計・運営の全体を包括して請け負う業務のこと

特定科目においては、高いシェアを誇る教科書出版社というだけあって取扱う品数は膨大です。生半可な準備では対応できないと感じ、業務設計を担う西尾氏などとも、すぐに協議を始めたそうです。その結果、まずアクションとして、A社様との定例会議を提案。澤田氏によれば、

「毎週、定例会議を開き、どこに不満があるのか。どんな不安を感じたのかを聞き取りしていきました。その中で、お客様が何を望んでいるのかを考え、それを叶えるべく体制を整えていきました

澤田氏
澤田 将一
図書印刷株式会社
第二情報デザイン営業本部第二部第二課

定例会議から見えてきたA社様の課題は、副教材関連の梱包、保管、発送業務がアナログ管理で業務のピーク時は非常に煩雑になっていること、現在の梱包、保管、発送業務のパートナー会社と委託費用やコミュニケーションに問題があることでした。

ゼロベースからお客様との打ち合わせを重ね、生産管理部門と丁寧に慎重に組み上げた3PLは、まだスタートしたばかりではありますが、お客様からは高い評価をいただいていると言います。評価のポイントとして大きいのは、やはり、定例会議による意思の疎通。これは、受注が決まり、実際に業務が動き出している現在も、月2回のペースで行われています。お客様の要望が不満や不安に代わる前に素早くキャッチして対応する。これまでの教科書、教材の物流業務効率化の経験が役に立ち、安心感に繋げることができたようです。

また、教科書や教材を販売する特約店(教科書供給会社)からの評判が上がったことも評価のポイントとして挙げられます。

西尾氏
西尾 伸一
図書印刷株式会社
生産管理本部 生産設計部

「特約店は古くからの問屋が多く、それぞれにクセがあります。我々がここに信頼を得ることで、業務がスムーズになることはもちろんですが、特約店のお客様(教科書取扱書店)からの評価アップにも繋がります」と定例会議に営業と一緒に参加していた西尾氏は言います。

さらに、お客様の信頼獲得に一役買ったものがあります。それは、我々が持つ倉庫の大きなキャパシティです。実際、今回の3PL業務は100万部単位の副教材を扱う案件であり、その大量の製品を保管する場所が必要でした。

「お客様が我々のグループリソースである倉庫を視察したことで、任せても大丈夫だと安心していただいたようです」と西尾氏。

教科書や教材を扱うための知識はもちろん、物理的に取り扱える環境があることも、お客様の信頼を得た一つの要因だったようです。

不満を安心に変える提案
「ちょうどいい」DX化で業務を効率化する

「今回の受注のポイントとして、以前のパートナーが3PL業務をアナログ管理していたところを効率化する、という点がありました」

と澤田氏。

今回の対象の副教材は量も種類も多く、また、細かな指示の多い業務。しかも、発送時期は春に集中します。ピーク時の煩雑さは容易に想像できるでしょう。先の定例会議でも中心となったテーマでしたが、澤田氏が感じたのは「極端なDX化は、お客様にとっては改悪になりかねない」ということでした。

「そこで、『ちょうどいい』DX化による業務フロー改善をご提案させていただきました」と澤田氏。

「『業務DX』というと、耳障りはいいんですが、莫大なシステム投資が必要だったり、実際の運用レベルで使いづらかったりすると意味がありません。お客様は長年アナログ管理に慣れていたため、一気にDX化を進めてしまうと受発注に関わるメンバーから拒絶反応が出るリスクがありました。我々としては、業務フローを設計していく際に、「半歩先」の提案を心がけて構築していきました。またシステムの拡張性も考え、順次DX化が進められるような配慮も忘れませんでした」

今回の取り組みでは、発注リストの最新版管理を当社のネットワークサービスにより実現し、運用ルールも取り決めました。これによりアナログ処理が激減し、同時にイレギュラー対応も減らすことができました。当然コスト削減にも繋がります。今後の道筋としては、輸送指示関連のシステム化がありますが、こちらは「定例会議」で議論して決めていく予定とのこと。不満を安心に変える提案、お客様の立場に立った提案は、信頼を築くうえで重要なポイントとなったことでしょう。

デジタルへの対応と業務のスマート化
これから図書印刷がすべきこと

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製作部門が教科書のデジタル化で大きく業務が変化したのに比べると、物流に関しては、まだそれほど大きな影響を受けているようには見えません。物流業務はデジタル化の流れにどう対応していくのでしょうか。

「市場の状況やデジタル化の進展を考えると、教科書・教材ビジネスも大きく動いていますから、当然サプライチェーンにも影響はあるはず」と西尾氏。

「生き残りをかけて、効率化や合理化は必須だと思います。我々としては、そこにうまくフィットしていければ」と澤田氏は言います。

「業務のスマート化という意味では、RPA※を使った受発注センターがお客様の業務効率向上に効果を発揮しそうです。また、デジタル教科書への対応も含めた、制作から配送までの一元化で業務領域を広げていくことが、我々の生き残り作戦でもありますね」と花出氏が締めくくりました。

※RPA(Robotic Process Automation):人間のみが対応可能と想定されていた作業、もしくはより高度な作業を、人間に代わって実施できるルールエンジンやAI、機械学習等を含む技術を活用して代行・代替する取り組み。

RPAに関しては、2年ほど前から図書印刷全社で業務効率向上を目指して推進しており、大きな成果を上げていると言います。「受発注センター」の構想は社内で積み上げたノウハウを、今度は教科書出版社の受発注業務に役立てようという発想です。 

RPAを活用した受発注サポートセンターのご案内

デジタル教科書の本格導入は目前。今後も教科書、教材を取り巻く環境は変化し続けていくことでしょう。

新たな技術と柔軟な発想で、変わっていく時代に呼応していきたい、と図書印刷は考えています。

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