OKRとは何か?MBOやKPIとの違い、導入効果、導入ステップについて紹介

人事・総務

近年、新しい目標管理手法としてOKR(Objective and Key Result)が注目を集めています。この記事では、OKRの特徴やMBO、KPIとの違い、Googleやメルカリなどの導入事例、導入する際の留意点をご紹介します。

OKRの特徴は「壮大な目標、シンプルさ、評価なし」

OKRとは目標管理手法の一種であり企業が掲げている目標(Objective)に対し、中間にいくつかの成果指標(Key Results)を設定し、目標達成までのプロセスを管理していく手法です。目標1つに対し3つ程度の成果指標が望ましいとされるシンプルなフレームワークです。指標が少ないため、社員も優先順位を意識しやすくなり、より重要な仕事にフォーカスすることが可能です。

一般に、OKRの目標は定性的なものが望ましく、成果指標は数字や期間が分かる定量的なものが適していると言われています。成果指標の期間は、例えば1カ月、四半期、半年などいわば企業のスピード感に合わせて設定することが可能です。また、導入に当たっては、まず会社全体のOKRを設定し、それに沿うかたちで各部署、各社員のOKRを決めていきます。以下に、企業のOKRの一例を挙げます。

目標(Objective):次世代の主力事業となりうる新規事業を創出する
成果指標(Key Result)1:新規事業支援室を4月中に創設
成果指標(Key Result)2:7月までに全社員からAI、IoT、エネルギー分野ほか成長市場に特化した事業企画案を公募
成果指標(Key Result)3:人材を選出し、新規事業プロジェクトを10月から複数発足

日本で最もポピュラーな目標管理手法はMBO(Management by Objectives)であり、OKRも実はもともとMBOから派生していますので、基本的な考え方は似ています。ただし、運用レベルで大きく違うポイントが2つあります。

1つ目はOKRの目標がMoon shot(月面着陸から由来する壮大なテーマ・目標)と呼ばれるくらいの、野心的で大きな目標を設定する点です。
「前年比120%の業績」などという、それまでの仕事のスタイルの延長戦上にある無難な目標ではなく、根本的にそれまでの仕事のスタイルや発想を変えなければ達成できないような、壮大な目標設定をすることが基本とされています。

2つ目は、人事評価制度と連動させない点です。
社員は目標を達成できなくてもネガティブな評価をされずランク付けもされません。自由闊達な精神で自分自身が立てたチャレンジングな目標に挑みます。全社員が壮大な目標を達成するためにマインドセットを変え、エネルギッシュに努力することで、たとえ目標が達成できなくても、結果的に個人も会社も大きな成長を遂げるという考え方がベースにあります。

OKRとMBOの違いをまとめると下記の通りです。

OKRの特徴

  • 会社、部署、個人が一見達成不可能なほどのハイレベルな目標を設定する
  • 人事評価と連動させない
  • 個人のOKRを積極的に見直しアップデートしていくことが可能

MBOの特徴

  • 高い目標とはいえ頑張れば実現可能なレベルの目標を設定することが多い
  • 人事評価と連動しているケースが多い
  • 目標は期の途中で変更できないケースが多い

OKRとKPIはどう違うのか?

OKRとKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)は、自分が目標に対してどの位置にいるかを把握する手法としては似ています。しかし、KPIはあくまでも目標を100%以上達成するための指標であり、達成不可能と思えるような壮大な目標・指標を設定するOKRとは前提と運用方法が異なります。

KPIの特徴

  • 100%達成することが前提の指標(OKRは100%の達成は不可能なレベルの目標・指標)。
  • 期の途中で指標を変更できない。

運用次第で似てしまう「OKR・KPI・MBO」

とはいえ、OKR、MBO、KPIともフレームワークにすぎません。厳密な運用ルールが決まっているわけではなく、導入企業がそれぞれカスタマイズしているため、実際は似た使われ方となっているケースもあります。

近年OKRが「新しいマネジメント手法」と熱い視線を浴びている一方で、「MBOやKPIと同じ」「新しくない」と言われるのもそのためです。実際、OKRの目標を“定量的でそれほどイノベイティブでない目標”にすると、かなりMBOに近づいていくと言えるでしょう。

いずれのフレームワークも企業の運用次第で、素晴らしいものにも陳腐なものにもなりえます。要は企業の目的と運用次第なのです。フレームワークを人事評価制度として使うのか、目標達成ツールとして使うのか、イノベイティブな企業風土を醸成するために使うのか、どこにフォーカスするかを自社の気風にも照らし合わせて絞ることが重要です。

OKRは人材育成に効果的?

一般に、人は大きな目標を持つことでマインドセットが変わり、物事に対する取り組み方が変わります。

OKRは、自分の限界を超えるほどの大きな目標を持つことを社員に奨励するフレームワークであるため、人材育成に効果的だと言えるでしょう。会社のOKRに部署のOKRが直結するように考えるのが特徴でもあるため、結果的に社員のOKRも連動することになります。全社一体で目標設定を行うため、綿密なコミュニケーションが欠かせません。かなりコミュニケーションを重視するフレームワークなので、上司が部下をサポートすることも増え、この点でも人材育成に効果的です。会社自体が壮大な目標を掲げているため、社員は常に会社の「あるべき姿・目指していること」を意識するようにもなるでしょう。自分の仕事の意義を理解できると仕事へのモチベーションも高まります。

OKRで社員が成長する理由

  • 大きな目標に全力でチャレンジするため、その過程で能力が伸びる
  • 達成したら誰からも称賛されるような困難な目標に向かうため、挑戦的なマインドが醸成される
  • コミュニケーションを重視する仕組みなため、上司が部下をよりサポートするようになる
  • 常に会社のOKRを意識するため、社員は自分の仕事の意義を理解できる

OKRの導入事例

3社のOKR導入事例を紹介します。各企業ともかなりカスタマイズしており運用スタイルはさまざまです。評価制度と連動させているケースもあります。

  • Google株式会社

「10%ではなく、10倍大きく考えよ」というスタンスで、「ストレッチ ゴール」と呼ばれる“達成可能だと考えられる目標よりも高い目標”を会社、チーム、個人が設定。GoogleはOKRの成功モデルとして有名ですが2015年には新CEOがOKRを簡素化するなど、随時、試行錯誤を繰り返しながら運用しています。

  • ChatWork株式会社

ビジネスチャットツールを展開するChatWorkでは、人事評価の一部に「OKRを通してどれだけチャレンジしたか」という指標を入れて運用しています。特徴的なのは数値目標達成を評価に反映するのではなく、チャレンジの姿勢を人事評価に反映させるような運用をしたことです。OKRの試験段階では、人事評価と連動させなかったため社員のモチベーションが上がらず、導入初期は逆に完全に評価と連動させたため社員が保守的になってしまったという経験から出来上がったものだそうです。

  • 株式会社メルカリ

個人間でモノを売買できるフリマアプリを展開するメルカリでは、人事評価制度にOKRと自社の行動指針(バリュー)の2つの軸があります。「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」という壮大な目標を達成するために、社員一人ひとりが、それを達成するためのOKRを設定し、スピーディに変化していくインターネットビジネス業界に対応しています。また同時に、メルカリが設定しているバリューにも沿った行動であることが評価基準になっているところが特徴的です。

OKRを導入する際のステップ、留意点

OKR導入は、まず会社の目標から決めます。目標は定量的なものではなく定性的なものが良いとされています。壮大で、社員の挑戦しがいのある全体目標を設定することこそが、OKRの成否を決めると言えるでしょう。下記は、一般的なOKRの導入ステップの例です。

  1. 会社全体のOKRを決める
  2. OKRの考え方を全社員に周知
  3. 各部署、各社員のOKRを決める
  4. 各部署あるいは各社員のOKRを公開し共有する
  5. 上司・部下は定期的にミーティングを行いOKRの進捗を確認。必要に応じてOKRをアップデート
  6. 各部署あるいは会社全体で定期的なミーティング(週単位、月単位、四半期など)を実施し、全員のOKRの進捗を共有。それぞれの成長度合いを確認しあう。

運用面においては、ほかのフレームワークと同じように当初はうまく機能しないことも想定されるため、常にアップデートしていくことを前提で取り組んでいく必要があります。

言い方を変えれば、アップデートを前提にしているところがOKRの特徴でもあり、米国IT企業やベンチャー企業などの変化が速い業界から高い評価を受けている理由の一つでもあります。とはいえ、いたずらに複雑化するとかえって社員の工数が増してしまいます。

「OKRの導入で社内はイノベイティブになっているか?」「社員のモチベーションは上がっているか?」などの、OKRを導入した目的を常に振り返りながら、運用していくことが望ましいでしょう。

 

まとめ

OKRは野心的で大きな目標に向かってチャレンジすることで、社員の能力を加速度的に成長させるフレームワークです。壮大な目的を社員みんなで目指し、チャレンジングな企業文化を創造し、その結果生産性を向上させることが目的です。運用に当たってはこのOKRの基本的な目的を忘れず、上手にアップデートしながら使っていくことが望ましいでしょう。

 

参考:

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