成功事例から学ぼう!ワーク・ライフ・バランスの上手な取り入れ方

成功事例から学ぼう!ワーク・ライフ・バランスの上手な取り入れ方

コミュニケーション

少子高齢化やビジネスのグローバル化が急速に進み、多様な人材の活用が求められている現在、ワーク・ライフ・バランスの視点を取り入れた経営がどの企業においても求められています。しかし、実際にワーク・ライフ・バランスの推進に着手しようとしたとき、どこから手を着けたらよいのか、本当に行う意味があるのかなど、戸惑う経営者や担当者も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、ワーク・ライフ・バランスの実現に取り組むメリットと推進のポイントについて、そして、自社に合ったワーク・ライフ・バランスを実現するヒントとして、取り組みに積極的な企業の事例を紹介します。

ワーク・ライフ・バランスに取り組むメリット

企業がワーク・ライフ・バランスの実現に取り組むメリットには、下記が挙げられます。

1.業務や組織を見直すことによる、労働生産性の向上

ワーク・ライフ・バランスの実現に取り組むことは、組織の既存の体制や業務内容をあらためて見直すことにつながります。無駄な部分・合理化できる部分などを見つけて改善することにより、業務の効率化、人材の適正配置が進み、組織全体の労働生産性向上が期待できます。

2.多様な人材の活用による、新たな視点の発見

ワーク・ライフ・バランスを実現すると、さまざまな背景を持つ人(出産・育児・介護中の人、再雇用、外国人、障がい者など)と一緒に働くことになるでしょう。それにより、従来にはない新たな視点が持ち込まれ、価値観の多様な時代によりふさわしいサービスや製品を生み出すことにつながります。

3.働きやすい環境が整備されることによる、優秀な人材の定着と確保

ワーク・ライフ・バランスが推進されている職場は、従業員が人生の各ステージで活躍できる働きやすい職場として、人材の定着を図ることができます。また、企業の社会的評価も上がり、人材の応募が増えることで、優秀な人材からの応募も期待できます。

ワーク・ライフ・バランスの推進を通して、業務の効率化や人材の適正配置などが進むことで、個人の働き方が変わるだけではなく、結果として企業の業績も向上していくといえます。

ワーク・ライフ・バランス推進のポイント

では、ワーク・ライフ・バランスを推進するには、どのような点に気を付けたらよいでしょうか。以下に3つのポイントを紹介します。

1.自社の現状把握

自社に合ったワーク・ライフ・バランスを実現するためには、まず自社の状況を把握することが必要です。社内の男女比率や女性管理職の割合、出産・育児休暇の取得率や年代ごとの離職率などを把握し、そのうえで、長時間労働の改善、女性社員の活用、自社の職務体制に合った制度の導入などを考えていくとよいでしょう。

2.企業戦略としての経営者主導による取り組み

長時間労働を美徳とするなどの社内に根付いた従来の価値観を、個人の力で変えるのは大変難しいといえます。ワーク・ライフ・バランスを実現するためには、企業戦略として、社内に影響力を持つ経営者が主体となって取り組み、積極的に制度の周知や活用の促進を行う必要があるでしょう。企業理念のひとつとして、ワーク・ライフ・バランスの実現を明記することも効果的です。

3.人事評価システムの整備や職場風土の醸成

育児・介護などのための短時間勤務、フレックスタイム、テレワークなどの制度は、導入するだけでなく、すべての人が安心して利用できるようにする必要があります。制度を利用した効率の良い働き方が評価されるよう、人事評価システムを整備したり、例えば、女性だけでなく男性も育休を取るのが当たり前といった職場風土を作り上げることも大切です。

ワーク・ライフ・バランスの事例紹介

実際に、それぞれ個性的な方法でワーク・ライフ・バランスを推進している企業の事例を3つ紹介します。

1.六花亭製菓株式会社「仕事も遊びも一生懸命」

北海道の代表的なお土産の一つ、「マルセイバターサンド」で知られる六花亭。従業員数1,346名(2018年現在)の北海道を代表する製菓会社は、Vorkersの「2017年働きがいのある企業ランキング ワークライフバランス」部門で、大企業にならんで第6位に入賞しました。

同社のホームページには、「一人ひとり持ち味、自分の色を持った人が好きです。」という社長からのメッセージが掲載されています。

そのメッセージの通り、六花亭では社員一人ひとりの持ち味を生かし、ワーク・ライフ・バランスを実現させるためのさまざまな取り組みが行われています。

  • 1日1人1情報制度:すべての社員・パートナーが、その日の出来事、お客様の声、仕事の改善・提案など自由なテーマで提出できる。社長がすべてに目を通し、翌朝の社内日刊新聞「六輪」に、選ばれた情報が記事として掲載される。そこから従業員の意見が反映された商品、企業体制などが生まれる。
  • 社内保育園「ごろすけ保育園」:総芝生の園庭、本社厨房で出来たての食事、週末・祝祭日も運営。
  • 英語力育成制度:TOEICや英検などの資格取得を補助金で援助。
  • 各種表彰制度:最優秀社員賞、最優秀新人賞、月間MVP賞など。
  • 社内旅行:行きたいコースと目的を企画し、6人以上が集まれば、70%の補助金(年間20万円まで)支給。
  • 公休利用法:年一回社内で公募・選考。自分の興味のあること(中国砂漠での植林ボランティア、個展の開催、野球コーチ研修など)をするために2週間~最大2カ月の公休を利用できる。

2.株式会社クレストコンサルティング「全従業員の仕事と生活の調和を応援」

従業員数17名(2018年現在)のクレストコンサルティングは、ITシステム導入コンサルティング業務からスタートし、「伝わる・わかりやすい」各種マニュアル制作を専門としている企業です。

同社は、事前申請の徹底化や属人的な業務の見直しなどにより残業を年間で約3分の1に減少させました。テレワークや時差出勤など柔軟な働き方を可能にしたり、育児・介護に関する研修を実施したりするなどの取り組みが評価され、「平成29年度東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」に認定され、大賞も受賞しました。

同社では、残業時間や有給消化に偏りが見られたため、互いに助け合う職場風土をつくり上げる取り組みも行っています。

  • 残業事前申告制:長時間労働を防ぐために、残業は当日の15時30分までに申告。未申告残業を防止するため、就業時間に合わせて、カードキーの入退室時間を設定。
  • 柔軟なテレワーク制度:子どもの病気などによる当日の急なテレワークも、就業時間前までに連絡すれば可能。
  • 看護休暇・介護休暇:子どもの看護、親の介護などのための休暇が15分単位で取得可能。
  • 全社平均残業時間の制限:育休・短時間勤務者がいることを常に前提として、長時間労働を防ぐために、全社平均残業時間は8時間以内をキープ。
  • 男性社員の育休参加応援:男性の育児参加を応援するため、育児休暇の取得を促進。また、育児への理解を深める研修を実施。

3. コネクシオ株式会社「人をつなぐ、価値をつなぐ」

従業員数5,070名(2018年現在)のコネクシオは、携帯電話の販売と、携帯電話を利用したソリューションサービスを提供する会社です。「NTTドコモ」「KDDI(au)」、「ソフトバンク」などと提携し、ドコモショップ運営数と販売台数シェア1位を記録しています。

同社は2018年だけでも、厚生労働省の認定で優秀な子育てサポート企業として、2度目の「くるみん」と「プラチナくるみん」を取得したほか、第8回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で「厚生労働大臣賞」受賞、第3回ホワイト企業アワードで『育児支援部門』と『イクボス部門』のダブル受賞、「健康経営優良法人2018 ~ホワイト500 ~」に2年連続認定など、CSR活動推進企業として社外から高く評価されました。

「ES(従業員満足)なくしてはCS(顧客満足)なし」という企業方針のもと、多様な個性や価値観を持つ従業員が生き生きと活躍できるよう、ワーク・ライフ・バランスを充実させる制度や職場環境づくりを推進しています。

  • 産休取得者へのフォロー:産休前後の研修や面談の実施、産休中の情報提供(社内SNSやオフ会など)。
  • 産休・育休取得促進:管理職向けの啓蒙研修、男性育休取得促進(2017年は63%が取得)。
  • 柔軟な働き方の推進:業務の繁閑などに応じて1か月単位で労働時間を調整できる変形労働・テレワークなど、多様な勤務形態を導入。
  • 有給休暇取得の実現:計画年休の導入、および全社員の取得達成(2017年は3日間の計画年休を全社員が取得)。
  • 雇用条件の改善:過去4年間で約2,000名の非正規社員を正規社員化し、安定した雇用を実現。
  • メンタルヘルス対策:eラーニングや集合研修でメンタルヘルス教育を実施。

まとめ

ワーク・ライフ・バランスの実現には、まず自社の組織や業務の状況を的確に把握することが大切です。社に合ったワーク・ライフ・バランスへの取り組みを、少しずつ行っていくとよいでしょう。

 

参考: