海外勤務に向いている人材とは?ミスマッチを防ぐための基礎知識

海外勤務に向いている人材とは?ミスマッチを防ぐための基礎知識

コミュニケーション

企業の海外進出に伴い、従業員を海外に派遣するケースが増えています。学生時代に海外留学を経験している人や、すでに海外勤務の経験がある人は、スムーズに海外勤務ができる可能性が高いでしょう。では、一般の従業員に海外勤務を任せる場合、どのような人材を選べばいいのでしょうか、考えてみましょう。

海外勤務に対する従業員の意識

産業能率大学が2017年度に新卒採用された18歳から26歳の新入社員を対象に実施した「新入社員のグローバル意識調査」では、「海外で働きたいとは思わない」と回答した人が全体で6割を超えました。また、海外で働きたくない理由は「語学に自信がない」が63.6%でトップです。留学経験の有無を見ると、留学経験者の76.5%は「どんな国・地域でも働きたい」または「国・地域によっては働きたい」と回答しており海外勤務に前向きでした。しかし、留学未経験者の70%が「海外で働いてみたいとは思わない」と回答しています。調査数は800名。その内訳は留学経験者が166名、留学未経験者は634名でした。

同様に、まだ実際に仕事を始めていない大学生にも、海外勤務に対して、やや消極的な傾向が見られます。毎年大学生の意識調査をしている株式会社マイナビの「2019年卒マイナビ大学生就職意識調査」によると、2019年3月卒業予定者を対象としたアンケート調査(調査回答数15,894件)では、全体で51.1%の人が「海外勤務はしたくない」という回答をしました。特に理系女子は58.7%が海外勤務を望んでいません。海外勤務に対して最も前向きな理系男子でも47%の人が海外勤務を望んでいませんでした。

近年の調査結果を見ると海外勤務の希望者は減少傾向であり、まず、入社時に海外勤務を希望している人を上手に育てる努力が必要となるでしょう。また、留学経験があると海外勤務に前向きになりやすいようです。語学研修や海外インターンシップなどを通して、海外勤務に興味を持ってもらうのも良い方法かもしれません。

海外勤務に適性のある従業員

環境が変わりストレスが増える海外で成果を出し、赴任期間を心身ともに健康に過ごしてもらうためには、適性がある人を選ぶことが重要です。海外に派遣する従業員を選ぶときのポイントを挙げてみましょう。

本人が海外勤務を希望している

まずは本人が海外勤務を希望している、海外勤務に前向きであることが挙げられます。語学や実務などのスキルはあとから学ぶことができますが「海外で働いてみたい」という気持ちはあと付けすることが難しいものです。

異文化に対応する力がある

仕事のうえで、文化が異なる人と積極的にコミュニケーションを取れる人を選びましょう。これは語学力とは別の能力で、語学ができても異文化に対応できるとは限りません。例えば、他国で仕事をすると、相手の国の文化を尊重しながらも、日本のやり方を受け入れてもらわなければならない場面が出てきます。このような場面で根気よく話を聞き、こちらの要望を説明し、うまく調整できる能力が必要です。

ある程度の語学力がある

海外赴任をすれば、日本語を話さない現地スタッフや取引先とのコミュニケーションは避けられません。たとえ社内の共通語が日本語であったとしても、仕事で指示を出したり、商談に出席したりするといった日常的な業務に、現地の言葉や英語が必要になることは多いものです。そして、語学力は仕事だけでなく、現地での生活にも直接関わってきます。病気になったときに病状を説明できる、銀行や役所などで各種手続きができるといったレベルの語学力は、最低限身につけておく必要があるでしょう。

語学力を向上させるためには、海外赴任前に語学研修を受けさせることもひとつですが、赴任後にも現地で語学研修を行う方法もあります。

専門知識があり実務能力が高い

海外勤務では、現地スタッフに仕事を教える立場になることが多いものです。また、日本では他のメンバーと分業していたことでも、すべてひとりでやらなければならないこともあります。単に専門知識を持っているということだけでなく、実務能力も高い人が理想的です。

ストレス耐性がある

海外勤務では、職場だけでなくプライベートの環境も大きく変わります。食生活や生活環境の変化は、思いのほかパフォーマンスに影響を与えるものです。ストレスに強くないと体調を崩してしまうこともあるので、候補者選びのときに注意をした方がよいでしょう。まず、日ごろの勤務状況を見ることで、逆境に強い人かどうかが分かれば、ストレス耐性の目安になります。さらに詳しくストレス耐性を知るには、適性検査を利用してみるとよいでしょう。海外勤務に向いているかどうかを調べる海外勤務適性検査もあります。

海外勤務前に必要な力を身に付ける海外赴任前研修

海外勤務が決まった従業員や、海外勤務希望者を対象に、海外赴任前研修を受講させる企業も多いでしょう。海外赴任前研修には、企業研修を企画する会社が主催するもの、語学学校が主催するものなどさまざまです。どの研修を受けるかで学ぶ内容が違ってくるため、目的に合わせてカリキュラムを吟味しましょう。海外赴任前研修では、主に次のようなテーマで学びます。

  1. 文化の違いを理解し、価値観や考えの違う人と上手く向き合う、異文化コミュニケーション
  2. 文化の違いを越えて協働するための、異文化マネジメント
  3. 赴任先の法律(労働法)や職場でのタブー
  4. 語学
  5. 赴任先の医療システムといった生活に必要な現地情報

海外勤務をする従業員は、語学研修だけではなく、異文化コミュニケーションや、異文化マネジメントについて知っておく必要があるでしょう。また、日本の職場で大目に見られていることでも、海外の職場では法的な問題になることがあります。例えば、面接のなかで婚姻の有無のようなプライベートに関する質問をしたり、上司が部下に対して大きな声で叱ったりすることは、ハラスメントや職場でのいじめとして捉えられる場合があるので気を付けなければなりません。そのほか、労働時間や労働環境に関する法律が日本より厳しく定められている国もたくさんあります。このような勤務地の文化や習慣の違いについても、赴任前にきちんと把握しておかなければなりません。

海外勤務の鍵は異文化に対応する力

海外勤務で活躍するには、まず文化の違いを理解したうえで現地の人と上手に関わることができる能力が重要になります。そして、日本企業のやり方を海外に持っていくだけでなく、企業理念をしっかりと伝えながらも現地の企業やスタッフと一緒に新しいものを作り出せる人が理想です。このような素質を持っている人材をうまく育てることが成功の鍵と言えるでしょう。

 

参考: