セクショナリズムの原因は何か?対策と具体例を紹介

人事・総務

セクショナリズムとは、組織が大きくなると必ず起きる現象です。日本だけの問題ではなく世界共通であり、また「国益」より「省益」と揶揄(やゆ)されるように、企業だけでなく公務員の世界でも起こります。本記事ではセクショナリズムが起きる原因や対策方法について紹介します。

セクショナリズムとは何か?

セクショナリズムとは、組織内の各部門の社員が、会社全体のことよりも自分たちの部署の利益のみにフォーカスするため、組織全体の生産性が下がる現象です。
もちろん自分が働いている部署へのロイヤルティーや、一緒に働くメンバーへの仲間意識は健全なものです。しかし、セクショナリズムが行き過ぎると、ライバル企業との競争や会社の未来よりも自社内での他部署との争いに目が向くようになります。個々の社員の視野が狭くなり、企業全体のチームワークは損なわれ生産性は低下します。

セクショナリズムが起こる原因、弊害、改善策

セクショナリズムが起きる原因と弊害、対策をいくつか紹介します。

原因1.ジョブローテーションの少なさ

セクショナリズムは往々にして他部署の仕事内容や状況への理解不足が原因です。近年、日本の企業もゼネラリスト志向からスペシャリスト志向になっており、以前よりも人事異動が減っていることが要因のひとつであると考えられます。

<弊害>
ほかの部署の仕事の進め方や大変さが理解できず、無理な依頼をしたり、他部門の仕事の価値を低く見たりする社員が増えます。また、営業部門と技術部門、間接部門と現場部門など、業務内容が大きく違う場合は特に対立しがちになります。お互いが相手に非があると感じてしまい、部門ごとの連携がスムーズにいかなくなるのです。さらにトラブルが起きた場合は、他部署に責任を転嫁しがちになります。

<対策>
対策部署横断型のプロジェクトをスタートさせ、各部署からメンバーを招集します。セクショナリズム対策が目的であってもプロジェクトのテーマに意義を感じないと参加メンバーのモチベーションは上がらないため、例えば、業務効率化プロジェクト、リファラル採用プロジェクト、働き方改革プロジェクトなど、その時期に本当に必要であると社員が感じるプロジェクトにすることがポイントです。
同じ目的を持って共に働くことで、他部署の社員との相互理解が生まれ通常の業務でのコミュニケーションもスムーズになります。また、プロジェクト中の対話を通じ、他部署の仕事の大変さや価値を理解しやすくなります。

原因2.成果主義人事制度、相対評価の普及

成果主義人事制度が普及し、部署ごとの成果が厳しく査定されるようになってから、セクショナリズムはより深刻になっています。特に相対評価(S、A、B、C、Dなどのランク付け)と評価分布(部署ごとの評価ランクの分布率)の仕組みを取り入れてから、ほかのメンバーの成果が上がると相対的に自分の評価が下がるという状況に社員は置かれています。ほとんど同じレベルの優秀な社員が3人いても、相対評価によりAランクが付くのは1人というような結果になるため、チームワーク意識は醸成されにくくなるのです。

<弊害>
例えば同じ営業部内であっても、各課での対立が生じます。業績を上げるためのノウハウは、「ちょっとしたコツ」、「少し早めの情報入手」であることも多いのですが、他部門に貴重な情報を共有することに消極的になります。SFAのようなシステムで情報共有化を奨励しても、当たり障りない情報のみ入力する社員が増え、生産性があまり上がらなくなります。

<対策>
米国では2010年ごろから、GE、アドビシステムズ、Googleをはじめ多くの企業がノーレイティング(社員のA、B、C、Dランク付け廃止)を導入しています。GEはベルカーブ(評価正規分布率)も廃止しています。そして、欧米の多くの企業が近年は社員のエンゲージメント醸成に力を入れています。
日本でも2016年ごろから目標管理制度(MBO)を見直す動きが加速しています。硬直化した相対評価の仕組みを見直すことは、セクショナリズム防止の対策のひとつです。

原因3.社員数の増加

セクショナリズムは、単純に社員数が増えれば増えるほど起きやすくなるでしょう。オックスフォード大学のロビン・ダンバー教授が行なった研究では、人間が安定した関係を維持できる個体数の認知的上限は150人という結果が出ています。組織が小さいとトップの意志、ビジョンが末端まで伝わりますが、大きい組織では情報は途中で遮断されます。また、経営者からも現場の状況が見えづらくなります。

<弊害>
当初は自由闊達(かったつ)だったベンチャー企業も、社員数が多くなると知らない人が増え、一体感が薄れます。業務が細分化され職務の担当範囲が決まることは、担当者の責任感が増えるといったメリットもありますが、自分の仕事以外に社員が関心を示さなくなる傾向があります。

<対策>
単純に人数の問題が原因の場合は、クロスコミュニケーション(部署をまたいだコミュニケーション)を促進することでセクショナリズムの防止につながります。各種サークル、社内SNS、イベントなど社員が他部署の社員と知り合うきっかけを提供すると効果的です。また、オフィス内にコミュニケーションスペースを設ける方法も有効です。

セクショナリズムを改善する方法

セクショナリズムを改善するには、クロスコミュニケーションの促進、組織の在り方や人事制度の変更、オフィスデザインの見直し、などがあります。ここまでに紹介したものも含め、具体的な例は以下の通りです。

<クロスコミュニケーションを促進する>

  • 部署横断プロジェクトを増やす
  • 社内SNSの導入
  • メンター制度を制定(他部門の上司をメンター設定)
  • サークル活動の奨励
  • 運動会やハイキングなど社内行事を復活
  • 社員寮の復活

<組織改革、オフィスレイアウト改善>

  • 組織改革(ティール組織や裁量権・自由度の高い組織に変更)
  • 人事評価制度の改善(ノーレイティング、ノーカーブ)
  • ジョブローテーションを増やす
  • オフィスレイアウトの見直し(オープンスペースと個人スペースのバランスをとる)

ベンチャー企業のように規模が小さい場合は、組織改革、オフィスの刷新、人事制度の変革が比較的容易です。組織の抜本的改革が難しい中堅~大手企業の場合は、既存の仕組みとは別個に、新規に社内SNS、メンター制度などの仕掛けを導入し、クロスコミュニケーションを活発にする方法や、部門横断型の新規プロジェクトをスタートさせる方法が、取り組みやすいと言えます。

クロスコミュニケーションを促進させてセクショナリズムを防ごう

セクショナリズムを防ぐには、組織の在り方や人事制度にセクショナリズムを加速させる要因はないか、チェックすることが大事です。また、制度や環境面を変更するだけでなくクロスコミュニケーションを積極的に促進していくと効果的です。

参考:

検索