BtoB企業のマーケティングにひな形はない。自分たちらしく小さく始める~上島千鶴氏【後編】

BtoB企業のマーケティングにひな形はない。自分たちらしく小さく始める~上島千鶴氏【後編】

マーケティング・販促

デジタルマーケティングの賢者たち(3)
上島千鶴氏【後編】

BtoB企業を取り巻くビジネス環境の変化にともない、BtoBマーケティングにおいてもDX(デジタル・トランスフォーメーション)の動きが本格化しようとしています。このような中、現状の成果や取り組み内容に不安を感じているマーケターも多いのではないでしょうか。

前回の、経営者やマーケターに向けたスペシャルインタビュー「デジタルマーケティングの賢者たち(3)上島千鶴氏【前編】」では、BtoB企業の動向やマーケティング組織のあり方について語っていただきました。

後編の今回は、図書印刷で自社のマーケティングに取り組む先田早織が、BtoBのデジタルマーケティングで第一線を走り続ける上島千鶴氏に、マーケターへのアドバイスや成功事例を聞きました。

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「自社をよく知り着実な歩みを」BtoBマーケターに送る“3つのアドバイス”

先田:BtoB企業でデジタルマーケティングへの取り組んでいる担当者や、今後取り組もうとしているマーケターに向けて、アドバイスをいただけないでしょうか。

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上島千鶴氏
株式会社Nexal
代表取締役

上島氏:デジタル化にとどまりませんが、私がBtoB企業のマーケターによくお伝えしているのは、次の3点です。

1つ目は、「BtoB企業のマーケティングに定型の雛形(ロールモデル)は存在しない」ということです。企業によって、商材、想定市場、営業体制、商流、マーケティング予算やその体制など千差万別ですので、他社で成功した枝葉施策に安易に飛びついてはいけません。競合や同業他社と比べて、よそがやっているからと施策をモノマネするのではなく、自社に合った体制と仕組みを作ることが何より重要です。マーケティングで成果を出しているBtoB企業ほど決して表には出ませんが、自社の事業戦略に沿ってマーケティングがどうあるべきか、社内で常に追及しています。

2つ目は、「組織をまたいだ議論が欠かせない」ということです。この記事の読者には、全事業を統括するマーケティング本部の方、事業を横断するデジタルマーケティング部門の方、一つのプロダクトのマーケティングを担う方などさまざまだと思います。それぞれの立ち位置や業務範囲、目標は異なりますが、いずれの場合も一つの部門内で検討を進めるのではなく、各部門長に合意を取った上で組織をまたいだ協議をきちんと重ねることが成功の秘訣です。

最後の3つ目が、「大きく考えて小さく始める」ことです。DXによって事業を最適化しようと理想像やビジョンを掲げることは重要ですが、いきなり遠いゴールに向けて一足飛びで動き出すのではなく、まずは小さな成功体験を作ることをおすすめしています。具体的には、商流やターゲットの定まっていない新規商材のみに集中したり、売上が伸び悩んでいる事業・営業部門との連携に限定します。そこで小さくPDCAを回して成功体験を積み重ねてから、社内で横展開していくと良いでしょう。

 

デジタル化で変わる顧客との関係。売上アップと効率化の事例

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先田早織
図書印刷株式会社
ソリューション開発推進部

先田:デジタルマーケティングで成功しているBtoB企業の事例を教えてください。

上島氏:ある大手電子部品メーカーでは、WEBサイトの全面リニューアルと同時に、デジタルで最初に接触した“リード情報”の活用方針を変更しました。

製造業では最近、大手企業がベンチャー系の小さな会社にプロトタイプの設計を依頼するケースが増えています。ベンチャー企業の裏に実は大手企業がいて、当初は小口の取引であっても量産段階に入ると膨大な量の電子部品が発注されることもあります。

従来であれば、営業担当者が目下の取引量を基準にアプローチを行わないようなリードでも、WEBマーケティングチームはデータ分析を行って顧客接点を継続し、大量発注につながる直前で営業に情報を渡しています。

これにより案件機会の創出・売上拡大につながり、当時はWEBマーケティング担当者数名だった組織が徐々に社内で評価され、今では当初の10倍に増え、グローバルマーケティングとして組織化されています。ボトムアップで小さな成功を重ね、他の事業部もデジタルマーケティングの効用を認識し、全社レベルでの展開が可能になったようです。

この事例に限りませんが、データ分析チームを持つことは成功には欠かせません。特に、営業部門出身のメンバーをチームに入れることで、データの裏に隠れている顧客の実態が見えてくるでしょう。

先田:その他にも、デジタル化やデータ分析により効果が上がった事例はありますか。

上島氏:事務機器メーカーや大手通信会社は、多くの中小企業を顧客として抱えています。かつては営業担当者が1社ずつ訪問して対応していたのですが、1営業あたりの担当顧客数が増え、全て対面で行うには対応が難しくなっていました。

そこで営業を「対面フィールド型」と「非対面インサイド型」に分け、単品販売の場合は提案からクロージングまでをWEBやリモート会議システムなどを使って「非対面」で対応し、複数の製品を組み合わせるソリューション提案の場合は「対面」の営業が行うようにしました。このように旧来一辺倒の営業スタイルから転換することで、営業生産性を高めつつ成果を上げた例もあります。

こうしたマーケティングや営業の手法を大きく変更した際に注意すべきなのは、短期的な成果を求めすぎないことです。単年で結果を出すのはかなり難易度が高く、3年先ぐらいを見ておくのがよいでしょう。既存商材で既存商流が確立されている事業を例にすると、3年後に事業貢献率が10%程度まで成果がでない場合は、何かしらの問題があるといえます。その原因は過剰なジョブローテーションや方針転換かもしれませんし、データ分析と仮説づくりの不足、営業部門との連携の問題かもしれません。要因を明らかにして、改善していく必要があります。

 

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DXの進展とともに求められる「営業」機能の再定義

先田:今後、BtoBマーケティングにおいて、デジタル化はどのように進展していくとお考えですか。

上島氏:IoTデータの活用やオフライン接点のデジタル化が進み、アカウントによる対面営業や、保守などのカスタマーサポートといった既存顧客との接点の見直しが、デジタルマーケティングの組織を中心に広がっていくのではないでしょうか。例えば、「消耗品の追加注文などの小口取引には、人が介在しない販売手段を拡充する」「非対面型であるインサイドセールス機能が高度化する」といったことが進行すると思います。「顧客の成果にコミットするカスタマーサクセスへの深化」も求められるようになります。

さらに、オンライン、オフラインを問わず、顧客のデータ分析や機械学習ができるようになるでしょう。マーケティング分野でもデータ活用による予測・予兆モデルが加速すると見ています。

今後もデジタル化の進展に伴い、広い範囲で新しい機能やチャネルがデジタル上に増えていきます。BtoBビジネスにおいても、企業における「営業」とはどのような役割を担うのか、再定義が必要となるでしょう。

先田:上島様、BtoBマーケティング担当者へのさまざまなアドバイスをありがとうございました。

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プロフィール
上島千鶴氏
株式会社Nexal 代表取締役

行動解析・データ駆動型のマーケティング歴20年。国内で初めてナーチャリング概念を啓蒙し、MAやCXMの市場創造に大きく貢献した。オンラインとオフラインのデータを繋ぎ、CXを実現するための戦略策定から実行計画、DMP/CDP/CRM再構築などのDX推進プロジェクトにも参画。全てのタッチポイントを顧客基点に再設計するBtoCビジネスや、事業戦略からマーケティングを定義し組織成長を後押しするBtoBビジネス向けコンサルティングに従事。著書に『マーケティングKPI「売れる仕組み」の新評価軸』(日経BP社)、『Web来訪者を顧客に育てるリードナーチャリング』(日経BPコンサルティング)、『リードビジネス「打ち手」大全』(インプレス)などがある。

先田早織
図書印刷株式会社 ソリューション開発推進部

自社のマーケティングを担当。2017年にデジタルマーケティングの考え方を自社に取り入れ、WEBサイトリニューアルのプロジェクトリーダーを務める。インサイドセールス機能の立ち上げにも従事。お客様に向けて有益な情報発信を行うべく日々奮闘中。

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