「データ分析者」が企業内で必須の存在となる世の中に〜小川卓氏【後編】

マーケティング

デジタルマーケティングの賢者たち(1)
小川卓氏【後編】

前回「デジタルマーケティングの賢者たち(1)小川卓氏【前編】」は、現在のWEB解析における課題や、経験が浅い担当者でも始められるファーストステップの施策を小川氏に伺いました。

スペシャルインタビューの後編である今回は、デジタルマーケティング担当者が、どうやってプロジェクトを進め、周囲を巻き込んでいくのか、データ分析のスペシャリストとして活躍する図書印刷の多田が尋ねます。

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“A4用紙1枚のレポート”で周囲に理解を求める

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小川卓氏
株式会社HAPPY ANALYTICS代表取締役

多田:デジタルマーケティングを実践しようと頑張っていても、なかなか担当者以外の社内理解が進まない例もあるようです。そうした状況で、担当者はどのように対処すればよいでしょうか。

小川氏:世の中にあるデジタルツールは著しい進化を遂げていますが、企業側にある「組織」がそれに追随できていないと思います。いくらAI(人工知能)などの先端的なテクノロジーが存在しても、企業が何をどうデータ活用するのか計画できていなければ先端的なデジタルツールも無用の長物です。

そのため、周囲にマーケティング担当者が何をしているのかを理解してもらうことが重要でしょう。プロジェクトを進める上で、私はPDCAや承認などのプロセスをフローチャートにして明確にするよう勧めています。

誰が何を承認するか明確にして、必要なドキュメントもはっきりさせておきます。承認フローが曖昧なゆえに、急に横から「そんなこと聞いてない」と水を差されたりしてプロジェクトが頓挫するケースも少なくありません。それを回避する上でも、早い段階でフローチャートを作成するのは有効です

もう1つは、組織全体の意識合わせを促す手法として、“A4用紙1枚のレポート”を活用することです。図や表を多用した何十ページにもわたるレポートを会議に提出しても、ほとんど理解されずに終わります。メールに添付したところで誰も見てくれません。それよりもA4用紙1枚で、「今月はこんなことがあり、だからこうした施策を講じたい」と簡潔にまとめます。

しかも、図やグラフなどのビジュアルは最小限にし、文章だけでシンプルに作成します。文章だけで伝えるというのは、実はごまかしが利きません。報告者が具体的にデータやグラフから何を読み解き、何を伝えたいか落とし込まなければ、文章は書けないからです。書くのが大変な分、人にも伝わりやすくなります。これにより組織全体で意識を揃えられるでしょう。

また、レポートを配って質問があがったとしたら、その人は「味方」です。質問するのは、興味があるということですから、面倒くさがらずに回答してあげてください(笑)。A4用紙1枚のレポートは、組織の中で味方を集める上でも武器になるはずです。

 

答えづらい「費用対効果」への対処方法

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多田良
図書印刷株式会社
デジタルマーケティング営業部

多田:社内の会議でサイト解析やデータ分析の「費用対効果」の説明を求められることもあります。こうした質問には担当者もなかなか答えづらいのではないでしょうか。対処法をお聞かせください。

小川:まず、考えなければならないのは「なぜ、その質問をされているのか」という点です。質問する人は、サイト解析やデータ分析に興味を持ってくれています。間違っても「突っ込まれている」「文句を言われている」なんて思ってはいけません。その人にも自分の上司などへの説明責任があるのでしょう。施策を実行したいという気持ちが少しでもあるから、重要な情報として、費用対効果を聞いているわけです。

正直なところ、サイト解析やデータ分析の費用対効果を正確に出すことは不可能に近いでしょう。私も10年以上携わっていますがいまだにわかりませんし、内心はみなさん難しいことを理解しているはずなのです。だから必要なのは、目標数値の「精度」ではなく、データから導き出された「ロジック」になります。売上金額が「1.2倍なのか」「1.3倍なのか」という細かな数字の問題ではなく、「このデータ使って予測するとこうなります」という説明が納得できるかどうかなのです。

 

経営者はデータ分析の丸投げを避けるべき

多田:逆に経営層からマーケティング担当者への期待やオーダーで気になる点はありますか。

小川氏:デジタルマーケティング分野に限らず、AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)といった領域でも似たような話が出てくると思いますが、経営層に多い「とにかくデータから分かることを教えて」という丸投げです。担当者はデータを使って現場の課題に対する仮説は出せますが、前提となる経営課題や「何のために」という目的が明確でなければ、データを前に右往左往してしまいます。ですから、解決したいことを伝えてもらうのが大切でしょう。

多田: 2020年以降、WEB解析においてどのような動きが出てくるでしょうか。

小川氏:やはり、Cookie(サイトに訪問したユーザーの情報を一時的に保存する仕組み)やセキュリティの話は、サイトトラッキングを抑止するITP(Intelligent Tracking Prevention)などの観点から、考えなければいけない時期にきていると思います。データが簡単に取れやすくなっているだけに、プライバシーの問題をどうしていくかなど、どこまで注意し、どこから大丈夫とするかの線引きについて、担当者の方も正しい知識をつけることが重要だと思います。

5G(第5世代移動通信システム)などの影響は、すぐに変化をもたらすものではないと思います。スマートフォンに変わる新たなデバイスが誕生した後で、影響が出てくるのではないでしょうか。あくまでも技術であって、そこに乗ってくる「物」があって初めて実感をすることになるのかなと。

多田:小川さん個人として、2020年は何か変化の年になりそうでしょうか。

小川氏:私のアナリストとしての取り組みは、この先も変わらず、一人でもWEB解析やデータ分析に興味を持ってくれる方が増えるような活動を続けていくつもりです。企業内に経理担当者が必ずいるように、社内にデータを見る担当者が当たり前に存在する社会が早く来ることを願っています

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プロフィール
小川卓氏
株式会社HAPPY ANALYTICS代表取締役

University College London(英国)卒業、早稲田大学大学院理工学研究科卒業。WEBアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパン等で勤務後、独立。複数社の社外取締役、大学院の客員教授などを通じてウェブ解析の啓蒙・浸透に従事。主な著書に『ウェブ分析論』『ウェブ分析レポーティング講座』『マンガでわかるウェブ分析』『Webサイト分析・改善の教科書』『あなたのアクセスはいつも誰かに見られている』『「やりたいこと」からパッと引ける Google アナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本』など。趣味はピアノ、テレビゲーム、サッカー、温泉。

多田 良
図書印刷株式会社デジタルマーケティング営業部

WEBアナリストとしてGoogle Analyticsほか、さまざまなツールを用いてECサイトの分析からKPI設計、改善提案まで、企業のデータ活用を支援。

図書印刷では、WEBサイトやEC事業の構築・リニューアルも含めた幅広いデジタルマーケティング支援サービスを提供しています。

「図書印刷が描くDX時代のマーケティング透視図」のページでは、当社の「デジタルマーケティング支援サービス」の導入企業のご担当者様や、デジタルマーケティング界の識者の方々へのインタビューを通じて得られた「生の声」を掲載。ぜひお客様のマーケティング活動にお役立てください。

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