少子高齢化やビジネスのグローバル化が急速に進み、多様な人材の活用が求められている現在、ワーク・ライフ・バランスの視点を取り入れた経営がどの企業においても求められています。しかし、実際にワーク・ライフ・バランスの推進に着手しようとしたとき、どこから手を着けたらよいのか、本当に行う意味があるのかなど、戸惑う経営者や担当者も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ワーク・ライフ・バランスの実現に取り組むメリットと推進のポイントについて、そして、自社に合ったワーク・ライフ・バランスを実現するヒントとして、取り組みに積極的な企業の事例を紹介します。
企業がワーク・ライフ・バランスの実現に取り組むメリットには、下記が挙げられます。
ワーク・ライフ・バランスの実現に取り組むことは、組織の既存の体制や業務内容をあらためて見直すことにつながります。無駄な部分・合理化できる部分などを見つけて改善することにより、業務の効率化、人材の適正配置が進み、組織全体の労働生産性向上が期待できます。
ワーク・ライフ・バランスを実現すると、さまざまな背景を持つ人(出産・育児・介護中の人、再雇用、外国人、障がい者など)と一緒に働くことになるでしょう。それにより、従来にはない新たな視点が持ち込まれ、価値観の多様な時代によりふさわしいサービスや製品を生み出すことにつながります。
ワーク・ライフ・バランスが推進されている職場は、従業員が人生の各ステージで活躍できる働きやすい職場として、人材の定着を図ることができます。また、企業の社会的評価も上がり、人材の応募が増えることで、優秀な人材からの応募も期待できます。
ワーク・ライフ・バランスの推進を通して、業務の効率化や人材の適正配置などが進むことで、個人の働き方が変わるだけではなく、結果として企業の業績も向上していくといえます。
では、ワーク・ライフ・バランスを推進するには、どのような点に気を付けたらよいでしょうか。以下に3つのポイントを紹介します。
自社に合ったワーク・ライフ・バランスを実現するためには、まず自社の状況を把握することが必要です。社内の男女比率や女性管理職の割合、出産・育児休暇の取得率や年代ごとの離職率などを把握し、そのうえで、長時間労働の改善、女性社員の活用、自社の職務体制に合った制度の導入などを考えていくとよいでしょう。
長時間労働を美徳とするなどの社内に根付いた従来の価値観を、個人の力で変えるのは大変難しいといえます。ワーク・ライフ・バランスを実現するためには、企業戦略として、社内に影響力を持つ経営者が主体となって取り組み、積極的に制度の周知や活用の促進を行う必要があるでしょう。企業理念のひとつとして、ワーク・ライフ・バランスの実現を明記することも効果的です。
育児・介護などのための短時間勤務、フレックスタイム、テレワークなどの制度は、導入するだけでなく、すべての人が安心して利用できるようにする必要があります。制度を利用した効率の良い働き方が評価されるよう、人事評価システムを整備したり、例えば、女性だけでなく男性も育休を取るのが当たり前といった職場風土を作り上げることも大切です。
実際に、それぞれ個性的な方法でワーク・ライフ・バランスを推進している企業の事例を3つ紹介します。
北海道の代表的なお土産の一つ、「マルセイバターサンド」で知られる六花亭。従業員数1,346名(2018年現在)の北海道を代表する製菓会社は、Vorkersの「2017年働きがいのある企業ランキング ワークライフバランス」部門で、大企業にならんで第6位に入賞しました。
同社のホームページには、「一人ひとり持ち味、自分の色を持った人が好きです。」という社長からのメッセージが掲載されています。
そのメッセージの通り、六花亭では社員一人ひとりの持ち味を生かし、ワーク・ライフ・バランスを実現させるためのさまざまな取り組みが行われています。
従業員数17名(2018年現在)のクレストコンサルティングは、ITシステム導入コンサルティング業務からスタートし、「伝わる・わかりやすい」各種マニュアル制作を専門としている企業です。
同社は、事前申請の徹底化や属人的な業務の見直しなどにより残業を年間で約3分の1に減少させました。テレワークや時差出勤など柔軟な働き方を可能にしたり、育児・介護に関する研修を実施したりするなどの取り組みが評価され、「平成29年度東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」に認定され、大賞も受賞しました。
同社では、残業時間や有給消化に偏りが見られたため、互いに助け合う職場風土をつくり上げる取り組みも行っています。
従業員数5,070名(2018年現在)のコネクシオは、携帯電話の販売と、携帯電話を利用したソリューションサービスを提供する会社です。「NTTドコモ」「KDDI(au)」、「ソフトバンク」などと提携し、ドコモショップ運営数と販売台数シェア1位を記録しています。
同社は2018年だけでも、厚生労働省の認定で優秀な子育てサポート企業として、2度目の「くるみん」と「プラチナくるみん」を取得したほか、第8回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で「厚生労働大臣賞」受賞、第3回ホワイト企業アワードで『育児支援部門』と『イクボス部門』のダブル受賞、「健康経営優良法人2018 ~ホワイト500 ~」に2年連続認定など、CSR活動推進企業として社外から高く評価されました。
「ES(従業員満足)なくしてはCS(顧客満足)なし」という企業方針のもと、多様な個性や価値観を持つ従業員が生き生きと活躍できるよう、ワーク・ライフ・バランスを充実させる制度や職場環境づくりを推進しています。
ワーク・ライフ・バランスの実現には、まず自社の組織や業務の状況を的確に把握することが大切です。社に合ったワーク・ライフ・バランスへの取り組みを、少しずつ行っていくとよいでしょう。
参考: