パーソナライズとは?注目される理由や効果、WEBマーケティングにおける活用例

CX(顧客体験)
インターネットでニュース記事を読んでいるときに、興味のない広告が何度も表示されてうんざりした経験はありませんか?一方、自分が欲しいと思っていた商品の広告がタイミングよく現れてショッピングを始めた経験もあるかもしれません。ユーザー個人の興味や好みに合う情報を提供できるということは、WEBマーケティングにおいて大きな意味を持ちます。今回は、WEBマーケティングにおけるパーソナライズについて解説します。
- 目次
- 1.パーソナライズとは?
- 2.パーソナライズが注目される理由
- 2-1.既存顧客を維持することの重要性が増した
- 2-2.ユーザーの求める情報が変化した
- 2-3.マーケティングテクノロジーが進化した
- 3.パーソナライズの効果
- 4.WEBマーケティングにおけるパーソナライズの活用例
- 4-1.レコメンド機能
- 4-2.メールマガジン
- 4-3.ステップメール
- 4-4.カゴ落ちメール
- 4-5.パーソナライズド検索
- 4-6.パーソナライズド動画
- 5.パーソナライズドマーケティングの成功例
- 5-1.ユーザーごとの年間音楽ランキングをお届け<Spotify>
- 5-2.好きなスポーツブランドが自分仕様になるアプリ<NIKE>
- 6.パーソナライズで顧客ロイヤルティを向上させよう
パーソナライズとは?
一人ひとりのユーザーに合わせてサービスを提供することをパーソナライズと言います。WEBマーケティングにおけるパーソナライズは、主に購入履歴や閲覧履歴をもとにしたユーザーの属性や行動データから、その人に合った情報をサイトやメールで提供することを指します。パーソナライズは、WEBマーケティングに限らず、さまざまな分野のカスタマーサービスや、マーケティングの手法として使われています。
パーソナライズが注目される理由
ユーザーごとに情報やサービスを最適化して提供するパーソナライズは、WEBマーケティングの分野で大きな注目を集めています。今、なぜパーソナライズが注目されるのでしょうか?その理由を探ってみましょう。
既存顧客を維持することの重要性が増した
少子高齢化の進む日本では、新規顧客の獲得は今後さらに難しくなるとされています。そのため、既存顧客を維持することが重要になってきました。中長期を見据えた戦略として、既存顧客の維持・定着への努力や投資が必要になったと言ってもよいでしょう。顧客や購買の情報をもとに個々の顧客との関係を深めるCRM(顧客関係管理)の施策を行う企業も増えており、パーソナライズはそのひとつの手法として注目されているのです。
CRMについては、下記の無料ebookで詳しくご紹介しています。ぜひご覧ください。
ユーザーの求める情報が変化した
ネット社会が進展し、スマートフォンが普及するにつれ、膨大な情報が私たちの暮らしを取り巻くようになりました。その結果、今、情報が多すぎると感じる人が増えています。そして、インターネットにあふれる情報をうのみにするのではなく、自分にとって有益な情報を得たいと思う傾向が見られます。
株式会社博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所が毎年実施している「メディア定点調査2019」(※)によれば「世の中の情報量は多すぎる」と答えた人は2016年では42.1%でしたが、2019年には51.5%まで上がりました。また「情報やコンテンツは無料で手に入るものだけで十分だ」と答えた人は2016年に46.0%でしたが、2019年では28.7%と20ポイント近く下がっています。これは、自分にとって必要な情報は有料でも欲しいという人が増えていると読み取れます。この3年間で人々がより自分に合った情報を求める傾向が強まっていると推測できるのです。
(※)「メディア定点調査2019」時系列分析|株式会社博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所
マーケティングテクノロジーが進化した
データ分析やAIなどのテクノロジーが進化したことも、パーソナライズが注目されるようになった理由のひとつです。テクノロジーの進化によって、より簡単で正確にユーザーの好みや行動に合わせたマーケティングができるようになったのです。
わかりやすい例として、個人の名前をメール件名や文中に表示できるメール配信ツールの差し込み機能が挙げられます。この機能を使えば、たくさん配信するメールマガジンであっても“あなた宛て”を強調することができます。顧客データベースの収集・分析・管理ができるCRM支援ツールの活用も進んでいます。CRM支援ツールを使えば、一人ひとりの購買履歴や属性に合わせたメールマガジンやLINEメッセージを、今までよりも簡単に生成し、配信することが可能です。
パーソナライズの効果
パーソナライズの最も大きな効果は、ユーザーが意識的・無意識的に欲しいと感じている情報を的確なタイミングで届けることによって、ユーザーの心を動かすことができることです。ユーザーの心に響く体験は、クリックや口コミ、情報のシェアというアクションにつながります。もちろんECサイトのレコメンドのように、商品やサービスの購入・利用に直結し、売上拡大に貢献するケースも数多くあります。
もし、すぐには売上には結びつかなくても、自分が欲しい情報を届けてくれる、自分にとって有用な企業だと顧客に感じてもらえれば、企業にとって大きな財産となります。企業と顧客との関係性の強化につながり、結果的に顧客体験(CX※1)を高め、顧客生涯価値(LTV※2)を向上させるからです。
(※1)顧客体験(CX=Customer Experienceの略)とは、顧客が商品やサービスを通して得る体験のこと。購入前の段階から購入、購入後のサポートまでを通した、購買プロセスに関わるあらゆる体験が対象になります。
(※2)顧客生涯価値(LTV=Life Time Valueの略)とは、1人の顧客が、特定の企業やブランドと取引を始めてからその終わりまでの期間(顧客ライフサイクル)内にどれだけの利益をもたらすかを算出したものです。
CX、LTVについてより詳しく知りたい方は、下記のコラムをご覧ください。
・CX(顧客体験)が今、重要視されている理由とは?顧客体験を向上させる3ステップと成功事例・LTV(Life Time Value・ライフタイムバリュー)とは?重要ポイントを解説
WEBマーケティングにおけるパーソナライズの活用例
WEBマーケティングにパーソナライズがどのように活用されているか、いくつか例を挙げてみましょう。
レコメンド機能
パーソナライズの代表例とも言えるレコメンド機能は、過去にWEBサイトで閲覧したり購入したことのある商品と関連の高い商品を、サイト上に表示して勧める機能です。
「Aを購入した人に、Bを勧める」というルールをあらかじめ設定するルールベース、商品同士の類似性を分析し関連商品を勧めるコンテンツベース、ユーザーの購買履歴からデータを分析しターゲットユーザーと類似したユーザーが購入した商品を勧める協調フィルタリングなどがあります。
レコメンド機能は、ECサイトをはじめ、音楽や動画配信のサブスクリプションサービスなどでも使われており、自分の好みに合う未知の作品に出会えるというユーザーエクスペリエンスを提供しています。
メールマガジン
メールマガジンにもパーソナライズが活用できます。属性や購入履歴、行動履歴から、興味を持つと想定される内容を選んだり、地域別の情報を送ったりする手法です。相手に応じて情報を取捨選択する複数のパターンを設定して、構成の異なるメールマガジンを配信することができます。
パーソナライズされたメールマガジンは、顧客が自分と関係のない情報を受け取らなくてすむ点も大きなポイントです。コンテンツが読者の関心・行動領域とずれているために起こる、メールマガジンの配信解除を防ぐことができます。
ステップメール
ステップメールは、商品購入後の個々の顧客の行動や心理に合わせて、段階的にフォローアップのメールを配信し、顧客との絆を深める手法です。購入直後のお礼メールやフォローメール、商品使用中のアドバイスメール、購入商品を使い終わるころにリピート使用を勧める販促メールなど、あらかじめ準備したストーリーに合わせて数回にわたってメールを配信します。
カゴ落ちメール
ECサイトにおいて、ユーザーが商品をカートに入れたあとに、購入手続きまで行かずに離脱することを「カゴ落ち」と言います。カゴ落ちが起きてから数時間後や数日後に「カゴの中の商品を忘れていませんか?」とアピールする“カゴ落ちメール”も、顧客の動きに基づいたパーソナライズのひとつです。
パーソナライズド検索
例えばGoogle検索では、ユーザーの位置情報や過去に検索したキーワード、SNSのログイン情報などをもとに、一人ひとりに最適化された検索結果を表示する「パーソナライズド検索」が採用されています。「カフェ」と検索すれば、ユーザーの現在地に合わせて近隣のカフェが表示されるといった具合です。
パーソナライズド動画
パーソナライズド動画とは、ユーザーの属性に合わせて個別にカスタマイズされた動画です。例えば、住宅の購入を検討しているユーザーの情報を使って、希望に合った間取りや地域の物件情報を集めた動画を生成します。そして「〇〇様へのご案内」というように名前を入れて配信するのです。動画は、文字や画像に比べて情報量が多く、高い訴求力があります。その動画が自分の要望に合わせて作られていることや、自分宛てのメッセージとして届くことで、“これは自分にぴったりの情報だ”という印象を強めることができます。
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パーソナライズドマーケティングの成功例
最後にパーソナライズドマーケティングの成功例を2つ紹介します。
ユーザーごとの年間音楽ランキングをお届け<Spotify>
音楽配信サービスのSpotifyはパーソナライズドマーケティングに定評があります。ユーザーの聴取履歴をもとにおすすめプレイリストが自動作成されたり、フォローしているアーティストがユーザーの居住地の近くでコンサートを開くときには、その案内がメールで送られてきたりします。2019年の年度末には「あなたの2019年まとめ」と題し、そのユーザーが1年間によく聴いた曲のランキングを、世界中のユーザー一人ひとりにメールで届けました。このランキングはSNSでシェアでき、シェアされた人もSpotifyで曲を聴くことができるという、販促にも役立つ仕組みでした。Spotifyはデータ分析をエンターテインメントにつなげたという点でも、国内外で評価されています。
好きなスポーツブランドが自分仕様になるアプリ<NIKE>
スポーツ用品のNIKEは、「ジブン仕様のNIKE」をコンセプトとしたアプリをスマートフォン向けに提供しています。NIKEアプリには、登録時に選択したスポーツやアイテムの情報をもとに、自分の興味や好みに合った最新プロダクトやサービスの情報が届きます。実店舗との連動も始まっており、NIKE原宿の店内や周辺にいる会員には同店で使えるさまざまな特典が送付されます。そのほか、会員限定商品や新商品の先行販売、誕生日プレゼントなどの特典もあり、顧客ロイヤルティを向上させる仕組みが多彩です。2018年12月にリリースされ、2019年7月の段階で40万人を超えるメンバーが登録しています。
パーソナライズで顧客ロイヤルティを向上させよう
誰でも画一的な情報より、自分のために用意された特別な情報を好むものです。パーソナライズドマーケティングによって、個人の関心や希望に寄り添った情報を適切なタイミングで届けることができれば、ユーザーに強い印象を残し、具体的なアクションを起こしてもらいやすくなるでしょう。また、自分のことを理解してくれる企業として信頼され、顧客ロイヤルティを向上させることもできます。マーケティングテクノロジーの進化によっても可能性が広がる、パーソナライズの導入を検討してみませんか。
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参考: